適正血圧の変遷
日経メディカルが、『「収縮期血圧120未満で予後改善」の衝撃』で、収縮期血圧(血圧の「うえのほう」のことです)を120未満に下げることにより脳や心臓の血管の病気が減る、という結果が出たことで日本の医療機関の対応がどう変わるかをインタビューして記事にしています。
記事はこのような書き出しで始まります。
11月中旬、複数の週刊誌に「血圧を120以下に下げろ」「『血圧は120以下に』は本当か」という見出しが大きく躍った。各誌は、米国立心肺血液研究所(NHLBI)が主導して行ったSPRINT試験(Systolicblood pressure intervention trial)の結果を受け、現状の降圧目標値140/90mmHgがさらに下回る値に変更される可能性を示唆。中には「現在の目標値を達成しても服薬を続けざるを得ない。製薬企業の策略ではないか」と論じた記事もあった。
SPRINT試験では、平均して厳格治療群は121.5mmHg、標準治療群が134.6mmHgとなった場合、
厳格治療群は標準治療群と比べ、心筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、心血管死を含む複合心血管病の発症が有意に減少した。
と結論が出ています。
しかし、日米の疾患の発生率には違いがあります。また、試験には前提条件(研究デザイン)がありますから、万能な結論というものではありません。
75歳以上の高齢者でも、より低い血圧値を目指す治療の妥当性が示されたことは尊重すべきだが、日本人に多い脳卒中に両群で差がなく、厳格治療群で有害事象が多い点を踏まえて解釈しなければならない。
というわけで、
日本高血圧学会も、「高血圧治療ガイドライン2014の降圧目標の範囲の中で、より低い血圧値を目指すことを推奨するが、現段階で個別の降圧目標値の変更を提示するものではない」という見解を示している。
とのことです。
収縮期120mmHgが目標になると、あまりにも多くの人が治療の対象となってしまいます。医療なのかアンチエイジングなのか分からなくなり、副作用含め弊害が大きすぎますよね。
血圧が高くなるのは何かと良くないことが、また一つ証明されたことは間違いありません。当たり前のことなんですが食事や運動など、生活習慣の改善により予防するのが理想です。皆様、養生いたしましょう(私もがんばれ!)。