アトピー性皮膚炎の新しいガイドライン

着実にいろんな成果を取り込んでいるんだなと思います。7年ぶりの改訂ですから、私がここ数年目にした新しい発見や、成果の出ている取り組み、今妻がしている治療などが含まれています。

一定の成果を出せる方向を、様々な研究の積み重ねと試行錯誤で定めていく。心強くも興味深い科学の為せる業ですね。遅々としているかもしれませんが、「○○でアトピーが治る!」なんて魔法はありませんし、何よりあらゆる事をしてきたという、うちの嫁さん自身が信じませんね。(^^)

鍼灸もそうありたい(科学でありたい)ものです。いや、鍼灸はそう進んでるんですよ、皆様!

 

ガイドラインはこちら

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopicdermatitis_guideline.pdf

 

以下、日経メディカルの記事です。

アトピー診療ガイドライン2016年版」発表 プロアクティブ療法を初めて推奨、血清TARC値も「有用」
2016/2/26 小板橋律子=日経メディカル

 日本皮膚科学会が、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」を日本皮膚科学会雑誌の2016年2月号に発表した。2009年以来、7年ぶりの改訂となる。

  これまで同様、薬物療法の基本は、「ステロイド外用薬とタクロリムス外用薬を組み合わせた抗炎症外用薬で、アトピー性皮膚炎の炎症を速やかに、かつ確実に 鎮静させること」としつつ、今回の改訂では、再燃をよく繰り返す皮疹に対するプロアクティブ(proactive)療法を初めて推奨した。

  プロアクティブ療法とは、急性期の治療により寛解導入した後に、保湿外用薬によるスキンケアに加え、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を定期的に(週 2回など)に塗布し、寛解状態を維持する治療法を指す。アトピー性皮膚炎患者の皮膚は、炎症が軽快して一見正常に見えても、組織学的には炎症細胞が残存 し、再び炎症を起こしやすい状態と考えられている。潜在的な炎症が残っている間、抗炎症外用薬を継続することで、炎症の再燃を予防するというのが、プロア クティブ療法だ。

 さらに今回のガイドラインは、プロアクティブ療法実施時に、皮膚炎の病勢マーカーとして、ケモカインの一種である TARC(thymus and activation-regulated chemokine)を測定することが有用であるとした。ただし、血清TARC値は、小児では年齢が低いほど高くなることから、基準値が年齢により異なる ことに注意すべきという。

 ステロイド外用薬と並んで治療の基本となるタクロリムス外用薬は、これまで皮膚癌やリンパ腫の発症リスクが指 摘されることがあったが、今回のガイドラインは、これまでの国内外の研究から「発症リスクを高めるとはいえない」とした。ただし今後、さらに大規模な解析 が必要であることから、外用量の制限を遵守することが重要とした。

 経口の抗ヒスタミン薬については、「抗炎症外用薬と保湿外用薬による 治療の補助療法」と位置付けた上で推奨したが、「抗ヒスタミン薬が全ての患者の痒みに効果があるわけではない」とし、痒みへの有効性を患者ごとに評価する ことを求めた。また、コントロール困難な患者に対して、シクロスポリンの内服を、コントロール困難な患者に対して「行ってもよい」とした(小児は適応外)。

 昨今、装置を導入する施設が増加している紫外線療法は、「抗炎症外用薬や抗ヒスタミン薬、保湿外用薬などによる治療で軽快しない 例やコントロールできない例、従来の治療で副作用を生じている例に考慮される治療法」と位置付けた。特に、311nmにピークを有するナローバンドUVB 療法は、治療後の遮光が不要な点などから、さらに普及するだろうと予想し、紫外線療法のプロトコル確立やガイドラインの作成が望まれるとした。

 生活指導に関しては、「汗をかくこと(発汗)」自体に症状を悪化させる根拠はないとし、「発汗を避ける指導は必要ない」とした。一方、「かいた後の汗」は痒みを誘発することがあることから、放置せず、洗い流すなどの対策を行うことを推奨した。

  また、妊娠・授乳婦に食事制限(アレルゲン除去)をしても、児のアトピー性皮膚炎の発症予防効果が認められず、逆に未熟児の発症リスクなどが増加していた という研究報告を受けて、ガイドラインでは「妊娠・授乳婦への食事制限(アレルゲン除去)は児の発症予防に有用ではない」とした。