鎮痛剤乱用に非常事態宣言
非常事態宣言!?と思って目にとめた日経の記事は下記の通り。なるほど、オピオイド系鎮痛薬のことだったんですね。以前は(最近も?)日本での積極的な利用がされていないという非難があった麻薬です。鎮痛剤としての最終手段なのですが、アメリカでは「蔓延」が問題になっていたとは。。。依存症にもそ~んなにならないから気軽に利用してっ!というキャンペーンに乗らなかったのは、ドラッグラグなどを批判される厚労省が正しかったということになるでしょうか。TPPなら抗えなかった??
それにしても、トランプ大統領の公約になるほど、そして非常事態宣言が出るほど問題だったんですね。
鎮痛剤乱用に非常事態宣言 米大統領、中毒死増で 2017/10/27 5:32
【ワシントン=鳳山太成】トランプ米大統領は26日、国内で鎮痛剤「オピオイド」の依存症患者や過剰摂取による死亡者が増えていることを受け「公衆衛生の非常事態」を宣言した。中毒死する人が年3万人を超えており、医療費が膨らむなど大きな社会問題になっている。連邦政府は患者の遠隔治療など規制を緩めて機動的な対策を打てるようになる。トランプ氏はホワイトハウスで演説し「我々の世代でオピオイドのまん延は止められる」と述べた。具体的には、オピオイドを扱う製薬会社に製造や宣伝で違法行為がないか取り締まるほか、中毒性が比較的低い医療用鎮痛剤の普及も急ぐ。
トランプ氏はオピオイド対策の強化を公約に掲げており、8月には「国家非常事態」の宣言も検討すると表明した。ただ、資金拠出を追加するなど効力の大きい国家非常事態の宣言は、長期的な問題の対処にはそぐわないとの理由で見送った。
公衆衛生の非常事態宣言は、2009年に流行した新型インフルエンザで出した例がある。
オピオイドはがんの痛みなどを抑える鎮痛剤として1990年代に普及した。中毒性が強く、2016年時点で米国人の依存症患者は200万人を超える。依存症患者が違法のヘロインに手を出す例もある。日本では処方が厳しく制限されている。
数ヶ月前から、この件問題になっていることを解説した記事がいくつか出ています。その一つ。オピオイドの8割消費とは、アメリカが特異的なんでしょうけれど…。他の記事でプリンスがオピオイド系鎮痛薬過剰投与で亡くなったとなっています。マイケルジャクソンに付いていた医師も怪しいペインクリニック医だったんでしょうか。
米鎮痛剤汚染 「害がない薬」の認識流布が背景
識者に聞く バージニア大学教授のクリストファー・ルーム氏
2017/9/2 5:47 日本経済新聞 電子版
鎮痛剤「オピオイド」による汚染が米国で深刻な社会問題になっている。依存症や過剰摂取による死亡も急増し、働かない薬物依存患者が労働市場など経済に与える打撃も無視できない規模になってきた。オピオイド汚染と経済の問題を研究するバージニア大学のクリストファー・ルーム教授に現状を聞いた。■痛み特化の医院も一因に
――オピオイドの世界供給のうち80%が米国で服用されているという統計があります。米国でこれほどオピオイドが増えた背景は何ですか。
「米国では痛みを十分に緩和できる治療への要望が高まっていたが、そこにオピオイドという鎮痛剤が開発された。製薬会社は積極的に販売促進し、医師もこれを好意的に受け止めた。依存症の危険も小さい害の少ない薬とみなされたからだ。諸外国の多くで政府による薬剤の管理統制が導入されているのに対し、米国はそうした規制がないこともオピオイドが簡単に普及した背景だ」
――流行が始まったのはいつごろですか。
「オピオイド製剤の1つ『オキシコンティン』が開発された1990年代終わりから2000年代にかけてだ。オキシコンティンは『オキシコードン』という薬を変形させたもので、薬の効果が時間をかけて現れるようにしたものだ。この薬は害はないまま、痛みの緩和の効果をより強くしたものとみなされ、普及した。しかし害がないというのは正しくなかった」
――米疾病予防管理センター(CDC)など政府は依存症の対策を講じなかったのでしょうか。
「つい4~5年前までオピオイド依存が問題になっていることをCDCやオピオイドの製薬会社はあまり認識していなかったのが実情だ。08~10年にやっとオピオイド汚染が深刻な問題だという認識が出てきたが、政府はそうした問題についての情報を一般に広める努力はしなかった」
「ペインクリニックといって痛みの治療に特化した医院がかつてあったが、実質的にはオピオイドの処方だけをやっていたようなものだ。そうした医院の閉鎖を含め、最近になってやっと対策を講じようとの姿勢が出てきたが、対策は必ずしも成功していない。しかもオピオイドだけでなく、ヘロインや合成薬フェンタニルというさらに危険な薬が普及、問題解決は一段と難しくなった」
■痛みに過剰な治療の傾向も
――CDCは医師向けにオピオイドの処方を控えるよう指針を示しました。これが代替物としてのヘロインやフェンタニルなどの使用拡大につながったのでしょうか。
「それもひとつの要因だ。しかし、ヘロイン使用者の多くがオピオイド使用者よりも若い傾向があり、必ずしもオピオイドの処方が抑制されたことだけがヘロイン使用拡大の理由ではない。ヘロインがかつてインナーシティ(都市部の貧困地域)を中心に流行していたが、現在は郊外や田舎でも使用が目立つようになった。安価なヘロインがメキシコなどから流入したことも背景にある」
――最終学歴が高卒以下で働き盛り(プライムエージ=25~54歳)の白人男性の間でオピオイドの過剰摂取が増えているのはなぜですか。
「正確な理由はまだ不明だ。エコノミストのアンガス・ディートン氏らの研究で白人男性の『絶望死』が論じられたが、私はこの議論にはやや懐疑的だ。理由はもっと別のところにあるように思う。ヒスパニックや黒人など非白人は痛みに対する治療の傾向が弱く、白人は痛みの治療をやり過ぎという傾向がある。非白人は医師からオピオイドを処方してもらうための医療保険の加入率が低いといった要因もあるかもしれない」
■経済状況との関連は調査なお必要 -省略-
■公費でまず患者の治療を
――オピオイド汚染を防ぐための対策は。
「需要側の対策の方が供給側の対策よりも比較的容易なので、まずはオピオイド依存の治療だ。多くの薬物依存患者が治療を受けたくても費用が高くて受けられないという現状を打開する必要がある。治療が受けられるとしても、最も効果的な治療かどうか分析する必要もある。そのためには政府が費用の大部分を負担することが強いられるだろう。これは政府の政策決定に委ねられる。毎年5万人がオピオイドの過剰摂取で死亡していることを踏まえれば、公的な対策は急務だ」
「供給側としては、安価な薬物が海外から流入するのを阻止することが重要だ。医師がオピオイドを処方する際には患者への情報提供を徹底し、ヘロインやその他の薬物についても話す必要がある」
(聞き手はニューヨーク=伴百江)
クリストファー・ルーム氏(Christopher Ruhm) バージニア大学公共政策・経済学教授。カリフォルニア大学バークレー校で学士、修士、博士号を取得。96~97年にクリントン大統領の経済諮問委員会のシニアエコノミストとして厚生政策、高齢化と労働市場の政策担当を経て現職。62歳
以上
Kさん
治療の症例、時間があるときに書いてみようかと思いました。
Kさん 70代 男性
夏の初めから3か月間、左の膝が痛くしゃがめない状態が続いてましたが、歩行に問題なく我慢できる程度の痛みだったので様子を見ておられました。しゃがむ必要があれば片膝伸ばして、その姿勢をとっていたそうです。
…大変そうですが、付き合っていける範囲であれば、なかなか治療には至らないものです。私も内科や歯科に関して、そんな感じかもしれません(^^;)
ところが、一昨日、腰がギクッと痛くなったことで、慌てて来院されました。
元々腰が悪く、往診で治療したことが何度かあった方でしたから、腰の怖さは身に染みて知っておられます。
状態を見ていきますと、今回の腰痛はまだ軽かったようです。そもそも来院できておられる時点で以前よりましです。良かった~。
それで、膝にも重点を置いて鍼灸を行います。腰部はそれでも圧痛の左右差がかなりあり、同程度で押さえて右は顔をしかめる、けれども左はちっとも痛くない、といった様子です。膝を曲げてみると右はお尻まで軽く着きますが左は15センチほど離れたところで痛みが出ています。
さて、長くなりました。結論から行くと腰部も下肢も筋は硬いのですが、痛みは無くなり、腰を曲げても、しゃがむ姿勢をとっても大丈夫とのこと。
ただし、「痛みがおさまった=すっかり治った」ではありません。ましてや、3か月痛みが引かなかった膝は、どうもまだ怪しいです。ストレッチの指導やしゃがむ姿勢についての話をして終了しました。
今回は1回で症状が取れ、私もうれしいのですが、治療の結果は患者さんの状態次第で変わることはお断りしておきます。程度、経過、治癒能力、現在の使い方(仕事などで使わざるを得ない…)、生活習慣(運動、食事、睡眠…)等々です。
以上
鳥関連過敏性肺炎は全国に6000人
日経メディカルから
「鳥関連過敏性肺炎は全国に6000人いる!? その難治性肺炎、ダウンジャケットが原因かも 」という、タイトルが気になって読んでみました。
記事では鳥抗原による肺炎の人が6000人ぐらい居るんじゃないかと、推定しています。アレルギー体質の面子が揃っている我が家も注意です。
たばこや塵埃など典型的な原因以外にも、過敏性肺炎、間質性肺炎があることを認識し、患者さんにも適切なアドバイスができるようにしていきたいものです。
間質性肺炎や過敏性肺炎が疑われた症例に対しては、鳥抗原を含め、原因抗原への曝露歴を調べるために問診を丁寧に行う。過敏性肺炎には鳥以外にも、家屋の真菌が原因の「住居関連過敏性肺炎」、家屋のトリコスポロンが原因抗原の「夏型過敏性肺炎」、牧草に増殖する好熱性放線菌が原因の「農夫肺」、塗料に含まれるイソシアネートが原因の「塗装工肺」、加湿器に増殖した細菌・真菌が原因の「加湿器肺」、キノコ胞子や細菌・真菌が原因の「キノコ栽培者肺」などがある。
例えば、鳥関連過敏性肺炎を拾い上げる問診で確認しなければならない項目は、(1)鳥を飼っているか、(2)幼少期など、過去に鳥を飼っていなかったか、(3)ベランダなど居住空間の周辺に鳥が群れている場所がないか、(4)鳥が群れている場所を散歩していないか、(5)ベランダに鳥の糞がないか、(6)羽毛布団やダウンジャケットを使用していないか、(7)鳥の剥製を部屋に置いていないか――など。
色々な病気があってその病因がある。詳しくわかってくるのは良いことではありますが、なんだか生きにくくもありますね。知識は正しく理解し活用する。余り神経質に考えないようにしましょう。
糖尿病は怖い
新しい記事かと思いきや、1年前の物でした。何故か目にとまって我が身を振り返りぞくっと。運動(不足すぎ)、食養生(口いやしい)、本気で行きます。
M3.comのニュースより
米国神経学会(AAN)は7月8日、2型糖尿病患者は発症後わずか2年で脳の血流調節能力に障害 が生じ、それが認知機能テストの低スコアや日常生活動作の衰えと関連することを明らかにした小規模研究の結果を「Neurology」オンライン版に掲載 し、学会ホームページで紹介した。
筆頭著者で米ハーバード大学医学部のVera Novak氏らが対象としたのは、2型糖尿病患者19例と非2型糖尿病21例の計40例(平均66歳)。2型糖尿病の平均治療期間は13年だった。検討で は、研究開始時とその2年後に認知力および記憶力、脳MRI画像での脳体積と血流測定、血糖コントロールと炎症の程度を評価した。
その結果、2年の間に糖尿病患者では脳の血流量を調整する能力が低下し、認知力や思考力に関する検査スコアも下がっていることが分かった。登録時に血流調整能力が低かった人ほど、入浴や料理といった日常生活動作をこなすスコアの低下幅が大きかった。
学習と記憶に関するテストでは、糖尿病患者では2年間で46点から41点へ12%低下したのに対し、非糖尿病者は55点を維持していた。糖尿病患者の脳血流調節能力は65%低下していた。
炎症レベルも血流調節の低下と関連しており、これは血糖コントロールが良好な人でも変わらなかった。
Novak氏は、「血流が正常に調節されていれば一定の動作を行う際に活性化される脳領域まで血液が行きわたるが、2型糖尿病や慢性的な高血糖の状態では血流調節は侵害されるようだ」と解説。
認知思考能力の加速的変化を予測する上では、血流調節能力を早期に評価し、モニタリングすることが重要になるとし、より大規模でのさらなる検討の必要性を指摘している。
お恥ずかしい話
こんなニュースが一般紙に載るのは恥ずかしい話ですが、でも、実は懲罰的な措置というわけでもなく、こういうことは業界が望んでいることです。記事の中にもありますが、鍼灸でも業界団体から厚労省などに対して同じような話をしています。免許持っている者からすれば卒業生がどんどん出てくるのは困る、ということでもありますが(^_^;)、それだけじゃなく徒弟制度などで鍛えられる場が無くなっているからこそ学校でしっかり教えないといけないということでしょう。
倫理かあ。一般医療でも商売熱心なところや、やってはいけないこと(グレーからブラックまで)をやる、コンサルタントを入れて健康保険をしゃぶりつくすことに熱心なところもありますし、実際に摘発されているところもあるわけですが、柔整は療養費という綱渡りをもともと?しているわけで、綱渡りが得意なため、よりいかに稼ぐかってことに抵抗が少なく、執心してしまう人が多くなってくるんでしょうか。でも、やっぱり悪いことをするっていうのは、一部なんですよ。ごく一部。(綱渡りはしていますが)
療養費不正
柔整師の養成、厳格化 職業倫理を必修に
2016年8月19日 (金)毎日新聞社
厚生労働省は、柔道整復師(柔整師)の養成カリキュラムを厳格化する方針を固めた。養成施設の卒業に必要な 単位数を85から99に引き上げた上で、職業倫理の授業などを必修化する。柔整師らが関与する療養費の不正請求が後を絶たず、養成段階での質の向上が必要と判断したためだ。制度発足以来、大幅な規制強化は初めて。来年度中にも省令改正し、2018年度からのスタートを目指す。柔整師は厚労省が認定する国家資格。接骨院などで施術する。医療行為は行えないが、骨折や脱臼などの施術に対して支払われる療養費は公的医療保険が適用される。
養成施設については、かつては旧厚生省が行政指導で新規開設を制限していた。しかし、養成施設に指定されなかった事業者が起こした訴訟で福岡地裁が 1998年に処分の取り消しを命じたのをきっかけに規制を緩和。00年度に25施設だった養成施設は15年度に109施設に急増している。
これにより、柔整師は近年、年間4000~5000人が合格し、14年時点で約6万4000人が就業。一方で、昨年11月には暴力団組員や接骨院経営者らが架空請求し、療養費を詐取する事件も発生。この事件の被害額は約1億円に上るとみられている。
柔整師の質を確保するため卒業に必要な単位数を増やして、社会保障制度の基礎や職業倫理の授業を必修化。施術技術向上のため臨床実習も拡充する。現在は最低履修時間数が設けられていないが、新たに「2750時間」に設定する方針だ。専任教員の実務経験年数を従来の「3年以上」から「5年以上」に見直す。
有識者による同省の検討会がこうした内容を盛り込んだ報告書を9月にまとめる予定。報告を受けて厚労省が省令改正に着手する。はり師やきゅう師、あん摩マッサージ指圧師の養成課程も単位数を引き上げるなど、同様の見直しを行う。【阿部亮介】
アリセプトの副作用
薬として認められているのだから、のんだ方が良いのだ!
ほんまにそうでしょうか?自分ならどうするか、自分の親、伴侶ならどうするか…服用して貰うかもしれません。しないかも。
さて、そんな微妙な薬の問題点を一つ解決できる道ができました。使用規定って誰が決めるんでしょうね?臨床試験の結果からでしょうけれど、製薬会社の陰謀?(みんな大好き陰謀論) 実際に投与されるのが壮大なる臨床試験ですから、方針変更は随時していただきたい物です。m3.comの医療ニュースから。
認知症薬の少量投与容認 厚労省、6月1日で周知 症例に応じて審査を
2016年6月1日 (水) 配信 共同通信社
高齢者医療に取り組む医師らが抗認知症薬の少量処方を認めるよう求めている問題で、厚生労働省は31日までに、添付文書で定めた規定量未満での少量投与を容認し、周知することを決めた。
認知症の進行を遅らせる「アリセプト」(一般名ドネペジル)などの抗認知症薬には、少量から始めて有効量まで増量する使用規定がある。規定通りに投与する と、患者によっては興奮や歩行障害、飲み込み障害などの副作用が出て介護が困難になると医師らのグループが指摘していた。
厚労省は6月1日付で各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)の中央会と、社会保険診療報酬支払基金宛てに、規定量未満の投与も症例に応じて薬剤費を支払うよう求める事務連絡を出す。処方の審査で地域差があった抗認知症薬を巡り、国の一定の見解が示された形だ。
事務連絡では、添付文書が規定する用量未満でも一律に査定するのではなく、診療報酬明細書(レセプト)に記載された投与理由を参考に、医学的に判断することとした。厚労省の担当者は「増量しないケースや、最低用量未満での使用も含まれる」と説明している。
共同通信が全国の国保連を調査したところ、過去3年間で9県が規定量に満たない少量投与で支払い請求を認めないと回答するなど、審査に地域差があった。
医師らのグループは症状に合わせて少量投与すると、診療報酬の支払いが認められない地域があり、少量処方を控える原因になっていたとしていた。
※抗認知症薬の使用規定
アルツハイマー病の認知症状の進行を遅らせる飲み薬としてドネペジル、ガランタミン、メマンチン、貼り薬としてリバスチグミンが承認されている。いずれも 添付文書で、吐き気などを防ぐため少量で始め、有効量まで増量すると規定している。例えば、ドネペジルは1日1回3ミリグラムから始め、1~2週間後に5 ミリグラムに増量。高度認知症にはさらに4週間以上経過して10ミリグラムまで増量する。規定通りに投与すると興奮、暴行、歩行障害、飲み込み障害などの 副作用が出る場合があるとして、少量投与を認めるよう医師らの団体が主張している。
副作用が出るから少量で利用したいのに、それじゃ健康保険で認められない。という問題を解決できる道が出来たと言うことです。
効果がどの程度なのか、副作用はどんな物なのか、実際に投与されて分ることも多々ある訳ですが、ふと思うのは「人柱」という存在。新しい電子機器など、まだ使い物になるかどうか分らない物を率先して買う新しもの好きの人をそう呼びます。薬もそうなんやろなー。新しい薬はそういった人柱的要素が強いような気がします。もちろん私は人柱になりがちな性向を持っておりますので、試しちゃうかもですね。
それ以上に、好きか嫌いかというと語弊がありますが、自分がどう生きていきたいかで医療や薬も選んでいく時代ですね。高度になったが故に。そのために、しっかり説明をしてくれる先生に診ていただきましょう!
末梢神経損傷によって未熟化した神経膠細胞(グリア細胞)が 難治性慢性疼痛を起こす脳内回路を作る
難治性の慢性疼痛に関する研究が一歩進みました。
慢性疼痛の元になる脳内の「痛みを敏感に感じてしまう」回路がどうしてできるのか、その原因の一つがわかったという話です。
原因が分らなければ対策の立てようが無いですから、推測されていた現象が実際に確認されたというのは大きいです。
そして、トリガーポイント鍼療法も、何を標的にして治療すべきか、道を探ることが出来るのです。
事故などで外傷を負った後、怪我をした部位が治癒しても長期間にわたり痛みが持続するような場合があります。このような症状を難治性慢性疼痛と言います が、なぜ傷ついた末梢組織が治癒した後も痛覚過敏が続くのか、この症状を引き起こす脳内メカニズムについては、これまで殆ど明らかにされていませんでし た。今回、自然科学研究機構 生理学研究所の鍋倉淳一教授、山梨大学の小泉修一教授、福井大学の深澤有吾教授、理化学研究所の御子柴克彦チームリーダーと韓国慶熙大学校の金善光博士ら の共同研究グループは、大脳皮質にある皮膚の感覚情報処理を行う脳部位において、脳内の神経膠細胞(グリア細胞)用語説明1の一種であるアストロサイト用語説明2が、末梢神経損傷の刺激を受けて未熟期の性質を再獲得することを、生きたマウスの脳内の神経回路を長期間観察する特殊な顕微鏡技術を用いて明らかにしました。未熟期のアストロサイトは神経細胞同士のつながりを変化させる因子(トロンボスポンジン)用語説明3を放出することで知られています。神経損傷の刺激によって成熟していたアストロサイトが再度未熟期の性質を取り戻した結果、この因子が小胞体のイノシトール三リン酸(IP3)受容体用語解説4からのカルシウムイオンにより放出され、大脳皮質の神経回路の再編成が起こり、末梢感覚に対して過剰応答する痛覚回路が作られます。この再編成された痛覚回路が長期的に維持されることが長期間持続する疼痛の原因であることを、明らかにしました。
本研究結果は、Journal of Clinical Investigation誌に掲載されます(2016年4月12日朝5時オンライン版掲載予定,解禁は日本時間4月13日午前6時)。
さらに詳細は自然科学研究機構生理学研究所の下記サイトで。
アトピー性皮膚炎の新しいガイドライン
着実にいろんな成果を取り込んでいるんだなと思います。7年ぶりの改訂ですから、私がここ数年目にした新しい発見や、成果の出ている取り組み、今妻がしている治療などが含まれています。
一定の成果を出せる方向を、様々な研究の積み重ねと試行錯誤で定めていく。心強くも興味深い科学の為せる業ですね。遅々としているかもしれませんが、「○○でアトピーが治る!」なんて魔法はありませんし、何よりあらゆる事をしてきたという、うちの嫁さん自身が信じませんね。(^^)
鍼灸もそうありたい(科学でありたい)ものです。いや、鍼灸はそう進んでるんですよ、皆様!
ガイドラインはこちら
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopicdermatitis_guideline.pdf
以下、日経メディカルの記事です。
「アトピー診療ガイドライン2016年版」発表 プロアクティブ療法を初めて推奨、血清TARC値も「有用」
2016/2/26 小板橋律子=日経メディカル
日本皮膚科学会が、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」を日本皮膚科学会雑誌の2016年2月号に発表した。2009年以来、7年ぶりの改訂となる。
これまで同様、薬物療法の基本は、「ステロイド外用薬とタクロリムス外用薬を組み合わせた抗炎症外用薬で、アトピー性皮膚炎の炎症を速やかに、かつ確実に 鎮静させること」としつつ、今回の改訂では、再燃をよく繰り返す皮疹に対するプロアクティブ(proactive)療法を初めて推奨した。
プロアクティブ療法とは、急性期の治療により寛解導入した後に、保湿外用薬によるスキンケアに加え、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を定期的に(週 2回など)に塗布し、寛解状態を維持する治療法を指す。アトピー性皮膚炎患者の皮膚は、炎症が軽快して一見正常に見えても、組織学的には炎症細胞が残存 し、再び炎症を起こしやすい状態と考えられている。潜在的な炎症が残っている間、抗炎症外用薬を継続することで、炎症の再燃を予防するというのが、プロア クティブ療法だ。
さらに今回のガイドラインは、プロアクティブ療法実施時に、皮膚炎の病勢マーカーとして、ケモカインの一種である TARC(thymus and activation-regulated chemokine)を測定することが有用であるとした。ただし、血清TARC値は、小児では年齢が低いほど高くなることから、基準値が年齢により異なる ことに注意すべきという。
ステロイド外用薬と並んで治療の基本となるタクロリムス外用薬は、これまで皮膚癌やリンパ腫の発症リスクが指 摘されることがあったが、今回のガイドラインは、これまでの国内外の研究から「発症リスクを高めるとはいえない」とした。ただし今後、さらに大規模な解析 が必要であることから、外用量の制限を遵守することが重要とした。
経口の抗ヒスタミン薬については、「抗炎症外用薬と保湿外用薬による 治療の補助療法」と位置付けた上で推奨したが、「抗ヒスタミン薬が全ての患者の痒みに効果があるわけではない」とし、痒みへの有効性を患者ごとに評価する ことを求めた。また、コントロール困難な患者に対して、シクロスポリンの内服を、コントロール困難な患者に対して「行ってもよい」とした(小児は適応外)。
昨今、装置を導入する施設が増加している紫外線療法は、「抗炎症外用薬や抗ヒスタミン薬、保湿外用薬などによる治療で軽快しない 例やコントロールできない例、従来の治療で副作用を生じている例に考慮される治療法」と位置付けた。特に、311nmにピークを有するナローバンドUVB 療法は、治療後の遮光が不要な点などから、さらに普及するだろうと予想し、紫外線療法のプロトコル確立やガイドラインの作成が望まれるとした。
生活指導に関しては、「汗をかくこと(発汗)」自体に症状を悪化させる根拠はないとし、「発汗を避ける指導は必要ない」とした。一方、「かいた後の汗」は痒みを誘発することがあることから、放置せず、洗い流すなどの対策を行うことを推奨した。
また、妊娠・授乳婦に食事制限(アレルゲン除去)をしても、児のアトピー性皮膚炎の発症予防効果が認められず、逆に未熟児の発症リスクなどが増加していた という研究報告を受けて、ガイドラインでは「妊娠・授乳婦への食事制限(アレルゲン除去)は児の発症予防に有用ではない」とした。
適正血圧の変遷
日経メディカルが、『「収縮期血圧120未満で予後改善」の衝撃』で、収縮期血圧(血圧の「うえのほう」のことです)を120未満に下げることにより脳や心臓の血管の病気が減る、という結果が出たことで日本の医療機関の対応がどう変わるかをインタビューして記事にしています。
記事はこのような書き出しで始まります。
11月中旬、複数の週刊誌に「血圧を120以下に下げろ」「『血圧は120以下に』は本当か」という見出しが大きく躍った。各誌は、米国立心肺血液研究所(NHLBI)が主導して行ったSPRINT試験(Systolicblood pressure intervention trial)の結果を受け、現状の降圧目標値140/90mmHgがさらに下回る値に変更される可能性を示唆。中には「現在の目標値を達成しても服薬を続けざるを得ない。製薬企業の策略ではないか」と論じた記事もあった。
SPRINT試験では、平均して厳格治療群は121.5mmHg、標準治療群が134.6mmHgとなった場合、
厳格治療群は標準治療群と比べ、心筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、心血管死を含む複合心血管病の発症が有意に減少した。
と結論が出ています。
しかし、日米の疾患の発生率には違いがあります。また、試験には前提条件(研究デザイン)がありますから、万能な結論というものではありません。
75歳以上の高齢者でも、より低い血圧値を目指す治療の妥当性が示されたことは尊重すべきだが、日本人に多い脳卒中に両群で差がなく、厳格治療群で有害事象が多い点を踏まえて解釈しなければならない。
というわけで、
日本高血圧学会も、「高血圧治療ガイドライン2014の降圧目標の範囲の中で、より低い血圧値を目指すことを推奨するが、現段階で個別の降圧目標値の変更を提示するものではない」という見解を示している。
とのことです。
収縮期120mmHgが目標になると、あまりにも多くの人が治療の対象となってしまいます。医療なのかアンチエイジングなのか分からなくなり、副作用含め弊害が大きすぎますよね。
血圧が高くなるのは何かと良くないことが、また一つ証明されたことは間違いありません。当たり前のことなんですが食事や運動など、生活習慣の改善により予防するのが理想です。皆様、養生いたしましょう(私もがんばれ!)。