睡眠導入剤

アシュトンマニュアル。という冊子を知りネットで落としてきました。現在一般的な睡眠薬睡眠導入剤)であるベンゾジアゼピン系の副作用についての情報です。離脱方法まで書いてあります。
睡眠薬は服用しないにこしたことは無い、と思っていたけれど正しい知識が無かったのでこの充実のマニュアルは役に立ちそうです。この考え方の日本の医学界における立ち位置は分かりませんが、原理原則に近いものは自ずと浸透していくと思います。風邪に抗生物質処方は無駄だとかも一般的になりました。(これは学生時代に聞いた話でしたから、20年ぐらいかかってましたが)


訳者による文が最後にあり、日本の現状も書かれています。

離脱症状(禁断症状)とは、場合によると、医療関係者が想像する以上に過酷なものとなり、その持続期間を限定することは不可能です。

にもかかわらず、以下のような言葉には聞き覚え有ります。

医師から、「長期服用して安全な薬」、「一生飲み続けて大丈夫」、「常用量では問題はない」などと言われ、その言葉を信用して飲み続けた結果、深い薬物依存に陥る人たちが今の日本には溢れています。そして、その人たちの多くは、医師に助けを求めても、「離脱症状は4 週間以内に消えます」、「それはあなたの元々の症状です」などと退けられて行き場を失くし、患者同士がインターネット上で必死になって情報交換しているのが現状です。

以下さらに続きます。この辺色々反論の余地有るのかもしれませんが。

1990 年代から既に、“日本の”様々な医学書や学術論文の中でも、患者に対して常用量依存や離脱症状についてインフォームド・コンセントが必要なこと、医師は患者の依存形成に注意を払わなければいけないことが明記されています。また、2000 年代に入って間もなく、日本のベンゾジアゼピン処方が諸外国と比べて飛び抜けて多いことが複数の論文で指摘されるようになりました。
更に2010 年には、国連の一機関である国際麻薬統制委員会(International Narcotics Control Board)がまとめた年次報告書でも同様の指摘がなされ、その背景には“不適切な処方”があると示唆されています。

ベンゾジアゼピン長期服用による脳の変化は、構造的には(未だはっきりはしないが)見つかっておらず、機能的なものである可能性が大きいようです。副作用があるという現実はあるけれども比較的安全ととらえられているせいか(?)、脳機能を調べる手立てが増えてきたにもかかわらず研究は進んでいないのです。で、作者は嘆いています。

そのような変化を示すためには、ベンゾジアゼピン長期服用者の脳の“活動”異常を調査する必要があるでしょう。そのような研究技術は利用可能です。例えば、fMRI (機能MRI)は局所的な血流を計測します。また、PET(ポジトロン放射断層撮影法)およびSPECT(単一光子放射断層撮影法) は神経伝達物質や受容体の活動を計測します。また、QEEG(定量脳波検査法)およびMEG(脳磁気図検査法)は局所的な電気的活動を検査します。このような技術のどれも、ベンゾジアゼピン長期服用者の対照研究において活用されたことはありません。認知機能検査により、脳の特定領域の機能障害を示す可能性が考えられますが、6 ヶ月以上に亘る研究はありません。最終的には、死後検査により脳内受容体の異常を示すことが可能かもしれませんし、動物実験を行えば、神経細胞(ニューロン)の遺伝子発現の変化を示すことが可能かもしれません。しかし、このような研究が行われたことはありません。また、ベンゾジアゼピン長期服用者における、他の組織あるいは器官の異常を調査する研究も行われていません。
脳機能の検査技術を用いたベンゾジアゼピン長期服用者の対照研究は、慎重に計画される必要があり、おそらく対照群、服用者群ともに、100 人以上の年齢および性別を適合させた膨大な数の被験者が必要となるでしょう。ベンゾジアゼピン服用者群においては、用量、ベンゾジアゼピンの種類、服用期間、精神疾患歴、症状、アルコールおよび他の薬剤の使用、その他いくつかのファクターを考慮しなければいけないでしょう。このような研究には費用がかかりますし、資金調達が困難であることが予想されます。製薬企業も援助したがらないでしょうし、英国医学研究審議会(Medical Research Council)やウェルカム財団(The Wellcome Foundation)、または英国保健省(Department of Health)のような‘独立した’機関も、これまでほとんど興味を示していません。
このように、ベンゾジアゼピンが脳あるいは他の器官に損傷を引き起こすかどうかという問いには答えがないままです。